Attention!
『不思議の国のユーリさん』はタイトル通り『不思議の国のアリス』のパロディです。
パロディが苦手な方はご注意ください。
また、キャラ崩壊も激しくなる恐れがあります。ご注意を。
それでも読むよ!という方は下のタイトルをクリックして下さい。
1.ネコとウサギとワンダーランド
「――……リ、――ユーリ」
呼ばれている。起きなければ。
そう思い、ユーリは意識を集中させる。ふわふわとしたまどろみの底から引き上げられる感覚。
「ユーリ!ユーリ!起きるのじゃ!」
「ん、どうした、パテ……イィッ!?」
ゆるゆると起き上ろうと目を開けたユーリがまず見たものは迫りくる少女の顔。さらに遅れて腹にドズンと衝撃が走る。
「っってぇ――」
おもいっきり顔をしかめるユーリ。対してその腹の上に乗っかる少女はニコニコ顔で笑いかける。
「ユーリ、おはようなのじゃ!」
「ハハ、ずいぶんと盛大な起こし方だな」
「うちの愛情たっぷりじゃからの。一発ですっきりお目覚めなのじゃ!」
フフフと両頬を手で包みこんでパティが身体を揺らす。ユーリはもう苦笑いを浮かべるしかない。確かに腹の上に飛びこまれれば一発で起きること間違いなしだが、それで起こされる方はたまったもんじゃない。
「ん?でもなんでパティがここにいるんだ?」
そろそろ起き上ろうとパティを抱え上げて腹の上からおろしてやりながら、ユーリは首をひねった。確かパティは冒険ギルドの仲間と共に海に出ているはずなのだ。
「それに今日はまた変わった格好してるな」
そう、ポニーテイルとボーダーのソックスの組み合わせは見たことがあるが、今日はその格好とはまた違う。ワンピースもピンクと赤紫のボーダーで全身が統一されている。ついでに頭にも同じ色のネコミミが乗っかっていて、のどもとには鈴のついたチョーカー。ポシェットも服とおそろい柄のネコの顔の形をしているが、これがまた三日月のように細く長い口でニタニタと笑っていてどうにも奇妙だ。
「今日のうちはネコじゃからな」
らららーらーらららーと何やらメロディーを口ずさむ。
「ちなみにユーリがヒロインじゃぞ」
ビシッとユーリを指さしてウインクした。思わずユーリはたじろぐ。
「ヒロイン?……何の話だ?」
「でも格好はウサギじゃ」
残念そうにがっくりと肩をおとすパティ。
まったくわけがわからずユーリは眉を寄せた。自分の格好を見てみると確かにいつもの服とは違うが、一見した限りではタキシード、つまりはただの正装でウサギとはとても思えない。まあ、ユーリにとっては堅苦しくてたまらないことこの上ないが。
「本当はウサギ役だったんじゃがのう、ジュディ姐が追いかけるのを嫌がったんで
ユーリになったんじゃ」
パティは、はあぁとあからさまに大きなため息をつく。さっきまではいつものパティらしい元気な笑顔を浮かべていたのに。
「な、なんでそんなへこんでんだ?」
状況が把握できていないだけにどうしてよいかいまいち分からず、おそるおそる尋ねてみる。すると俯いて影になった顔からギロっと鋭い視線が飛んできた。うっ、とユーリは身じろぎする。なんで今発言のどこが琴線に触れたのか。もうユーリにはお手上げだった。そんなユーリにさらに追い打ちが放たれる。
「ユーリが悪いのじゃ!」
「は!?」
「ユーリが悪いのじゃぁー」
なんで二回言ったんだ、なんてつっこむ間もなくパティは叫びながらだだだだだと丘の上に走っていく。
そういえばここはどこなのだろうとユーリはあたりを見回した。起きたはいいが、寝る前の記憶がおぼろげでほとんど思い出せない。前方に丘、後ろは森。やっぱり覚えのない場所だ。記憶を失うほど酒を飲んだ覚えもないのだが……。
今日何度目か分からないが、またユーリは首をかしげて立ち上がる。
パティはというと丘の上から向こうの方を見てなにやら手を振っている。誰かが来たようだ。
「おーい、パティ」
呼ぶとパティは振り返り
「ユーリ早く来るのじゃ」
さっきの叫びは何でもなかったかのようにユーリを呼ぶ。
どうも今日のパティはわからない。
パティのそばまで行くとちょうどその人物も着いたところであった。
「ジュディ」
あぁ助かった、ジュディならちゃんと話が聞けるだろうと声をかける。だがしかし、その希望はあっさりと打ち砕かれた。
目があった途端その緋色の瞳はキッと鋭くなり、いやなオーラが漂い始めた。
これは……怒ってる!かつてないほど怒っている!
ユーリは身震いした。こんなに怒りのオーラを放っているジュディスを見たのははじめてかもしれなかった。かわいらしい青のエプロンドレスを着ているからか、その表情とのギャップがひどく大きく、さらに恐ろしさを増幅させる。そして何よりも恐ろしいことに、その怒りは明らかにユーリに向かっていた。困ってパティの方を見るが、あからさまにこちらから目を反らしている。助けは期待できないらしい。
「ジュ、ジュディ……?」
仕方なく、もう一度声をかけてみる。努めて笑顔を向けたつもりのユーリであったが、その次のことばが出てこない。
ダメだ、勝てない。
笑顔がひきつる。
すると、ジュディスは突然ふいと顔を反らしてつかつかと歩いて離れていく。
「あ、ジュディ姐!」
慌ててパティが呼びとめるが彼女の足は止まらない。
「ユーリ、追いかけるのじゃ!」
「は!?」
「ジュディ姐を追いかけるのじゃ!早く!!」
「あ、ああ」
頷いてユーリはジュディスを追いかける。ジュディスは歩みを速くし、すでに走りだしていた。
「おい、ジュディ!」
呼び掛けるとジュディスはちらりと振り返り、さらに足を速くした。
「ジュディ!待てよ、なんでそんな怒ってんだ?」
叫べども返事はない。
「くそっ!何がどうなってんだよ!」
ユーリはもうやけくそだ。全力疾走でジュディスを追いかけていく。
ぐんぐん、ぐんぐん、二人の距離が縮まって
「ジュディ!」
彼女の肩に手をかけようとした。そのとき。ふわりと浮遊感がした。え、とユーリは目を見開く。気付くと足が地面を蹴ったはいいが、着地すべき所が見当たらない。もちろんそうなると後は落ちるしかなくて。ぐんぐん、ぐんぐん、落ちていく。
ユーリは目の前が真っ暗になった。
「ユーリ、ちゃんと仲直りするんじゃぞー」
遠くでパティの声が聞こえた。
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まずは、すいませんでした!!
なんかやらかしちゃいました。まさかのアリスパロ。
いや、久々にでぃすにーのアリスを見たらポコっと思いついちゃいまして、ついつい書いてしまいました。
好きなんですよーアリス。
先日描いたらくがきではユーリが白ウサギでジュディスがアリスだったんですが、今回は逆です。
でも格好はそのまま。だってユーリのエプロンドレス姿なんて!いやまあ絶対似合いますけども!
そんなの想像しながら書ききる自信はなかったです(笑)
少し長くなる予定なのでしばらくお付き合い頂けると幸いです。