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ぽわ*わ
TOV非公式二次創作ブログサイト。ジュディスとユーリばっかり。
Admin / Write
2024/05/03 (Fri) 18:40
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2009/11/06 (Fri) 23:28



ジュディスが戻ってきた。
話も聞けた。
彼女の過去、旅の目的、始祖の隷長との関係……。
そして今日、ギルド凛々の明星としてのケジメもついた。
これでやっとギルドが再スタートをきれる、と
ほっと胸をなでおろした、
そんな夜。
彼女はまた寝床を抜け出す。


  your mind


キィと扉の閉まる小さな音をしっかりと耳に残して、ユーリは身体を起こした。
すっかり眠り込んでいるみんなを起こさないように細心の注意を払いながら
ゆっくり静かにリタの家を出て彼女の後を追う。
深夜のアスピオの街はシンとしずまりかえっているものの、
灯りはあちこちについており、人の気配がそこここに感じられる。
よく考えると日の光の差さないこの街には夜も昼もないのだといまさら思う。
昼間よりも静かだと感じたのも、空気が張り詰めて感じるのもきっと気持ちの問題なのだろう。
しかし、いやに肌に纏わりついてくる冷たさだけは夜の帳独特のそれであった。
ユーリは崖沿いの階段を上り、広間を抜け、門をくぐり、外で瞬く星が見えるところまで出てきた。
そして、その先には星空を見上げる彼女の姿が。
自分の予感が当たっていたことにユーリはほっと息をつき、
悪い予想が当たっていなかったことに安堵を重ねる。
すうぅ、と小さく息を吸い込んで、ユーリは彼女の後姿に声を投げかける。

「ジュディ」

「あら、ユーリ。こんな夜遅くにどうしたのかしら」

こちらの気持ちを知ってか知らずか、振り返ったジュディスは至っていつもどおりのトーンで声を投げ返した。
しかもユーリが後ろから来ていたのに気付いていながらその返答なのだから参ってしまう。
こういうところがジュディだよなぁと心中で苦笑する。
少しなつかしく感じる、いつものやりとり。

「いや、別に。ただの散歩だよ」

だからユーリもいつものように言葉を返してジュディスの隣まで歩みを進めた。
ジュディスはそれを横目でちらりと確認して

「そう……。ふふ、大丈夫。私もただの散歩よ。
 言ったでしょ、もう勝手に出ていかないって」

夜空を見上げながらころころと笑う。
つられてユーリも笑いをこぼす。
やはり読まれていたか。だが、それならなおさら、どうしてまた寝床を抜け出したのだろう。
ユーリなら、気が付かないわけがないと分かっていて。

「ホントにジュディは何でもお見通しだな」

いらぬ答えを出してしまいそうな考えを頭から追い出して、ユーリは言葉を紡いでいく。

「そんなことないわ。あのときだって……」

「あのとき?」

オウム返しに尋ねるとジュディスは視線をこちらへ向けてひとつ頷いた。

「テムザ山。まさかあんなに早く追いかけて来てくれるだなんて思わなかったもの。驚いたわ。……ありがとう」

「不義には罰を。オレはギルドの掟を守りに来ただけだ。もし状況が状況ならジュディを斬ってたかもしれないぜ」

「ふふ、それでもね、うれしかったのよ」

冗談まじりのユーリの台詞をジュディスはさらりと受け止める。
一体彼女はどれだけの覚悟をしてギルドを抜けたのだろう。
どれだけの傷を負いながら魔導器を壊し続けてきたのだろう。
それに……とジュディスは言葉を続ける。

「不思議なものね。今までずっとバウルと二人で生きてきた。バウルさえいてくれれば十分だったのに。
 一度あなたたちといっしょにいるとそっちが当たり前になってなってしまって。
 ノードポリカを出てから、もちろんバウルはいっしょにいてくれたけれど、それでも……」

「さびしかった、か?」

言い淀んで堰き止められた言葉をユーリが拾い上げる。
そうか、とユーリはなんとなく得心する。こんな弱音が出てくるなんていつものジュディスらしくない。
自身でもそれが分かっていながら吐き出さずにはいられなかった。
それほど彼女が参っていたということか、ユーリになら吐き出してもいいだろうという信頼か、
はたまたその両方か。なんにしろ、今この会話が為されているのがユーリにとって至極光栄なことだと
言っても自意識過剰ではないだろう。
ジュディスは、きっと『さびしい』という言葉がくすぐったかったのだろう、にこりと目を細めた。

「そうね、すごく心細かった。もうあなたたちに会えないのではないかと思うと余計に」

ほら、こんな言葉が出てくるなんて。
ユーリは心の奥から湧き出てくるあたたかいものにひたひたと満たされていくのを感じた。

「んなわけないだろ。仲間なんだから。ほっとけるわきゃねえよ」

軽い口調で否定してジュディスの顔を見たユーリは目を瞬いた。
口元こそは笑っているものの、細められた瞳、八の字の眉。
憂いに満ちた彼女の顔は、そう、今にも泣き出しそうな表情で。
ああ、そうか、こんなにも彼女はオレたちを必要としてくれていた。
彼女には申し訳ないけれど、それが嬉しく、ありがたい。
思わずほころびそうになる口元を慌てて引き結ぼうとするが、うまく隠せそうもなくて

「なんて顔してんだよ」

そのままくしゃりと破顔する。
今度の笑みは彼女のために。
そして、そっとジュディスの肩を引き寄せる。

「大丈夫、世界中どこ逃げたってオレが迎えに行ってやるよ」

ぽんぽんと頭をなででやるとスンと鼻をならす仕草。

「そんな子供扱いしないで」

拗ねたように言う声もかすかに震えが交ざっていて、
ぐらり
何かが傾く音がした。
さらに笑みが深くなる。
身体を少し離し、こちらを見上げる彼女の瞳のその目元に光るものを舌で拭いとる。

「これでいいのか?」

ニヤリとユーリが口の端を上げると、ジュディスもつられてほほえんだ。

「ふふ、よくできました」

「今度はこっちが子供扱いかよ」

「ごほうび、あげないとね」

そう言う声はもういつもように凛と澄んでいて、すっとユーリの耳を通って行った。
その心地よさに気を取られているうちに、ふわりと甘い空気が漂い、唇にやわらかい感触。

「……どうも」

思わず目線を反らしてしまう。
そんなユーリを見てくすくす笑うジュディスの声が澄んだ星空に響き渡った。




――――――――――――――――――――

素直なジュディスさんを書きたかったのですよ。
あと、ジュディスの頭をなでるユーリと。
うちのユーリさんはけっこう攻めていきたいらしい……。

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